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2026.10.09東京大阪
8月31日、専門部カフェ&バリスタ専攻とカフェ専攻の2年次メンバー5人が技とホスピタリティを競う「L‘ECOLE VANTAN Barista Championship 2026」が開催されました。今年は競技者ごとに異なるコーヒー豆が渡され、レシピづくりから本番まで、1人ひとりの表現が問われる大会に。5人の物語と、審査員の講評を追いました。

1. 「豆を見れば、わかるはず」
競技は、エスプレッソ2杯とラテアート付きのカフェラテ4杯を8分で提供し、「接客サービス」「技術」「プレゼンテーション」「タイムマネジメント」で審査されます。2026年の大会では大きな変更点がありました。それは豆です。約1か月前、競技者1人ひとりに産地の違う豆が1kgずつ渡されました。伝えられたのは国名だけで、生産処理は伏せられています。司会を務めた篠崎講師は「去年までは全員同じ豆で、5人ともフレーバーが似てしまって面白くありません。またナチュラルなど豆の背景を言ってしまうと、それだけで先入観が入ります」と理由を語り、こう続けました。「豆を見れば、わかるはず」。焙煎はスクールの焙煎講師が担い、メンバーは夏休みにスクールへ通って、粉量、湯温、抽出量、ひき目を決めていきました。

審査員席には佐藤宇宙講師、林講師、来年度入学予定者、そして昨年の同大会でグランプリをとった卒業生・吉本陽菜さんの姿も。1年前に「緊張しました」と話していた先輩は、今年は採点者として大会を見守ります。
2. 「このコーヒーの何を、自分はどのように引き出したいのか?」
トップバッターは専門部カフェ&バリスタ専攻2年次・武政颯太さん。
インドネシア産の豆を前に、彼が選んだテーマは「変化と挑戦」でした。レコールバンタンに入学しコーヒーを学び始めたころは、「ただおいしく上手に入れることしか考えていませんでした」。豆と向き合う時間が増えるにつれ、産地の文化、生産者の思い、豆の個性、そしてバリスタの表現力が、一杯に重層的に込められていることを知りました。ただの“正解”を探すのではなく「このコーヒーの何を、自分はどのように引き出したいのか?」という哲学までを考えるようになったと話します。

力強いボディで知られる産地の豆から、あえてハーブやカカオ、桃のようなストーンフルーツの甘さを引き出しました。レシピは、粉量15g、湯温90℃。「皆さまの中にあるインドネシアコーヒーの印象が少しでも変化していたなら、私の挑戦には意味があったと思います」と締めくくりました。レシピづくりでいちばん苦労したのは「甘さを出すところ」だったと、質問タイムで明かしました。

3. 「深煎りは苦いものというイメージを変えられたら」
2人目、専門部カフェ専攻2年次・髙岡文乃さんに渡されたのは、ルワンダ産の深煎りでした。プレゼンの冒頭、彼女は「普段は、深煎りのコーヒーがあまり得意ではありません。苦みが前に出るより、コーヒーの甘さや果実味、透明感のある味わいが好きです」と打ち明けます。コーヒーを好きになったきっかけも、「苦いもの」というイメージが覆された一杯があったからだといいます。

だからこそ、苦みではなく甘さと質感を引き出す。湯温を88℃まで下げ、抽出不足になりやすい分はひき目を細かくして補い、何度も条件を変えて調整を重ねてきました。「この一杯で、深煎りは苦いものというイメージを変えられたらうれしいです」

競技の終盤、4杯目のラテでミルクがこぼれます。彼女は落ち着いてもう一杯を入れ直し、時間内に4杯を並べました。質問タイムで吉本陽菜さんがミルクのこだわりについて尋ねると、「苦手意識があるからこそ、クリーミーに感じてもらえるように温度が上がりすぎないようにしました」

4. どんな状況でも同じように入れられるオペレーションを組む
3人目、専門部カフェ&バリスタ専攻2年次・西巧登さんのコンセプトは「どんな状況でも同じように入れられるオペレーションを組む」こと。派手な演出をして本番で失敗する可能性より、自分が慣れた手順で再現できることを選びました。コスタリカ産の豆で、湯温を92℃から91℃に下げ、18gのバスケットに17gを詰める。使う器具と自分の技術を理解し、1g単位で味がどう変わるかを研究してきました。


準備万端の彼が、本番で1つだけ忘れたものがあります。香りを閉じ込めるために用意していたエスプレッソの蓋でした。「緊張しました」と本人自ら笑いにかえ、審査員席からも「大会でいちばん笑った」と声が上がりました。
5. 最後の抽出までを考えてコーヒーをつくる

4人目、専門部カフェ&バリスタ専攻2年次・天間空音さんは、グアテマラ産の豆を、あらかじめ冷やしたカップに抽出しました。通常のカップでは、しっかりしたコクは出るのに、表現したかった酸味と甘さが弱く感じられた。冷やしたカップなら、コクを保ちながら爽やかな酸と甘さが立ち、揮発しやすい香りを液体の中にとどめられるといいます。焙煎を学ぶ過程で「最後の抽出までを考えてコーヒーをつくることの大切さ」を知ったと話します。


直前にマシントラブルが起き、準備時間が延びるなかでの競技でした。佐藤宇宙講師は「鼻から入る香りは弱い分、口に含んだときのフレーバーにボリュームがあります。“伝えたいこと”が伝わってきました」と応えます。競技の合間、篠崎講師は「深煎りは二酸化炭素が多く、ガスの抜け方に合わせてレシピを組みます。また、夏は牛乳の脂肪分が1年で最も低いので、スチームで約10%の水分が入ります」と授業さながらに解説し、「大会のいいところは、普段お店でやらないことにいろいろチャレンジできることだと思います」とバリスタたちの背中を押しました。
6. グランプリに輝いたのは……


最後に登場した専門部カフェ&バリスタ専攻2年次・野口みずきさんが、カップを審査員席に置いて、競技は終わりました。[美小1]

厳正な審査の結果、グランプリに輝いたのは野口みずきさん。同日開催の「独立開業チャレンジ2026」には「Mysteek coffee」出店者としてのぞみ、競技を終えて休む間もなく、お客さまにドリップコーヒーを入れて提供していました。

5人が入れたコーヒーは、それぞれがどのように豆と向き合ってきたかを、豊かに表現していました。
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